JAFCOF-産炭地研究会の冬の活動をご紹介いたします。
当研究会は、3月上旬に福岡県の筑豊にて視察を行いました。
・3/8(木)は、九州大学箱崎キャンパスにある旧石炭研究資料センター(現在は附属図書館記録資料館)の視察と筑豊・糟屋炭田跡の視察を行いました。
九州大学大学文書館の市原猛志氏のご案内により、箱崎キャンパスの建物群の見学や、附属図書館付設の記録資料館の見学を行いました。
また、午後からは海軍志免鉱業所竪坑櫓・斜坑(国の重要文化財)、麻生鉱業山田炭鉱の施設群、三井鉱山山野炭鉱の鉱山学校の訓練坑道跡を見学しました。さらに、山野炭鉱の社宅群を見学し、現在も建物を改築しながら人びとが居住している様子をみることができました。最後に、三菱鉱業飯塚炭鉱の巻上櫓台座跡を見学しました。
・3/9(金)は、田川市石炭・歴史博物館、直方市石炭記念館、宮若市石炭記念館の見学を行いました。
田川市石炭・博物館では、福本寛学芸員のご案内のもと、展示室および産業ふれあい館を見学しました。また、博物館施設内に設置されている福岡県の近代化遺産である旧三井田川鉱業所伊田竪坑櫓と第一・第二煙突(二本煙突)の外観を見学しました。さらに、博物館では2011年に日本国内で初めてユネスコ世界記憶遺産に登録された「山本作兵衛コレクション」の展示が行われており、その一部を拝見しました。福本氏には、筑豊炭田における田川市の位置づけと、「山本作兵衛コレクション」の世界記憶遺産登録後における博物館の役割について質疑応答の時間をとっていただきました。
午後には、直方市石炭記念館と宮若市石炭記念館の見学を行いました。
**********************
筑豊炭田は、財閥という大手資本によって経営された炭鉱と地元資本による炭鉱が混在していた点で、各地域がそれぞれ異なる特徴・性格をもち、筑豊炭田全体を固定的なイメージから想起することは難しいと言えます。しかし、それぞれの炭鉱がもっていた各々の特徴を丁寧に読み解いていくことで、筑豊炭田のあり方を浮かび上がらせることが可能ではないでしょうか。
2日間の視察において、さまざまな示唆を与えて下さった市原・福本両氏に厚く御礼を申し上げます。
海軍志免鉱業所竪坑櫓
(早稲田大学 須藤)
2011年度に発行されました、JAFCOFメンバーによる著書をご紹介いたします。
************************
島西智輝 『日本石炭産業の戦後史―市場構造変化と企業行動』
慶應義塾大学出版会、2011年、5,670円、ISBN4766418873
日本の坑内掘炭鉱は、北海道の釧路コールマインを残して消滅した。しかし、北海道夕張市の財政破綻、山本作兵衛の炭鉱画の世界記憶遺産登録、そしてスパリゾートハワイアンズとフラガールたちの活動など、石炭産業にまつわる話題は絶えない。それでは、石炭産業はなぜ事実上消滅してしまったのだろうか。そして、なぜ現在に至るまで石炭産業にまつわる話題は絶えないのだろうか。これらの問いに答えるためには、石炭産業の歴史を知る必要がある。しかしながら、日本の石炭産業の歴史を記録した書物は、35年以上前に出版された矢田俊文の著作(『戦後日本の石炭産業』)を除いてほとんど見られない。日本の石炭産業史の研究は、事実上放置され続けてきたのである。
本書は、戦後日本のエネルギー市場の動向と、それに対する石炭企業の対応を分析することによって、上記の問いの一部に答えようとするものである。これまで十分に解明されてこなかった石炭市場の取引制度、石炭の品質と環境への影響、採炭から選炭にわたる技術革新とその限界、労働者と賃金制度の問題などについて総合的に分析し、戦後石炭産業の衰退過程とその歴史的意味を明らかにした。その詳細は本書に譲るが、石炭産業はエネルギー革命の影響によって単線的に衰退したのではなく、市場、企業、労働者、および政府の動向が複雑に絡み合うなかで衰退していったことを強調した。また、政府のエネルギー政策や産業合理化政策の成果と限界についても検討をくわえた。
戦後日本の石炭産業やエネルギー市場に関心を持つ方々に、本書をお読みいただければ幸いである。
島西智輝(香川大学経済学部准教授)
JAFCOF-産炭地研究会の夏の活動をご紹介いたします。
当研究会は、8月に釧路で調査を行いました。
・8/22(月)は、現在、日本国内唯一の石炭採掘事業を行っている釧路コールマイン株式会社を見学し、実際に社員の方々が入坑する場面や、稼働している選炭工場を見せていただきました。
・8/23(火)は、雄別炭鉱跡の巡検を行い、雄別炭鉱の元社員の方に案内をしていただきながら、当時の生活の様子を丁寧に解説していただきました。また、元社員の方への聞き取り調査も行い、その様子が地元北海道新聞に取り上げられました。
2011.8.24 北海道新聞
・8/24(水)は、太平洋炭礦の元社員の方々へ聞き取り調査を行い、その後、釧路市立城山小学校内に設置されている「太平洋炭礦資料室」を見学させていただきました。
2011.8.25 釧路新聞
三日間にわたり、大変有意義な、中身の濃い調査となりました。釧路でお世話になった皆さまに深く感謝いたします。
今後、釧路での調査の様子は、継続してブログでご紹介してまいります。
(早稲田大学 須藤)